日本には香典返しという決まった仕組みがあります。四十九日の忌明けに、 いただいた香典の半分ほどを品物で返し、挨拶状を添えるのが一般的です。これは 葬儀社や百貨店が段取りを持っていますし、文面の雛形もあります。
このページで言うお礼は、それとは別のものです。具体的に何かをしてくださった 方への個別の一言です。棺を担いでくださった方、子どもを預かってくださった方、 食べるものを届けてくださった方、弔辞を述べてくださった方。香典返しの挨拶状は 全員に同じ文面が行きますが、この一言はその方にしか当てはまりません。
義務ではありません。やらなくても誰も責めません。やるなら三つで足ります。短く 書くこと、具体的に何かをしてくださった方に書くこと、そして立派な手紙を書く力が 戻るのを待たないこと。戻りません。
本当に出す必要はあるのか
香典返しは出します。慣例として確立していて、出さないと相手が困ります。
個別のお礼は別です。それは慣習で、誰も強いていません。そして負担はいちばん 悪い時期に落ちます。亡くなったあとの数週間、手続きと疲労のあいだです。
役に立つ目安が二つあります。受け取らなかったはがきを数える人はいません。 来てくださった方は故人のために来たのであって、お礼を受け取るために来たのでは ありません。そして数語がはがき一枚に匹敵します。夜に送ったメッセージは、 印刷された挨拶状と同じ役目をします。
ご家族が何人かいるなら、名簿を分けてください。この作業を担えるものにする唯一 の方法です。
誰に書くか
限らなければならないなら、優先順に。
- 何かをしてくださった方 — 棺を担いだ、子どもを預かった、車で送った、 食べるものを届けた、立て替えてくださった。
- 弔辞を述べてくださった方、文章を読んでくださった方。
- 来られずにメッセージや供花を送ってくださった方。
- 職場やご近所でまとまって弔問してくださった方 — 代表の方に一通で足ります。 それ以上を期待している方はいません。
ただ来てくださっただけの方は何も期待していません。名簿が目録になってきたら、 長すぎるという合図です。
いつまでに
香典返しは四十九日の忌明けに。 これは決まっています。
個別のお礼は一か月、二か月でも遅くありません。 それを過ぎても書いて ください。三か月後に届くお礼は遅れたのではありません。周囲が電話をやめた 時期に届くのですし、すぐに出したものよりよく受け取られることが多いのです。
遅れを謝らないでください。「遅くなってしまい」は自分について語る一文で、読む 方には何も渡しません。
具体的に何を書くか
三つの要素を、この順に。その方が何をしてくださったかを言う、それで何が 変わったかを言う、そして終える。三行がよいお礼です。十行はよくないお礼です。
🔴 そして一つ決まりがあります。重ね言葉を避けてください。 「重ね重ね ありがとうございました」は反射的に出てきますし、まさに避けるべき言い方 です。「本当にありがとうございました」で足ります。
実際に手を貸してくださった方へ
「母を寺まで乗せてくださって、午後のあいだずっと一緒にいてくださいました。 あなたがいなかったらどうしていたか分かりません。ありがとうございました。」
弔辞を述べてくださった方へ
「工房での仕事のお話は、家族の誰も知りませんでした。あの日、父のことを一つ 教えていただきました。お越しいただき、ありがとうございました。」
来られずに書いてくださった方へ
「お手紙は、家が空になった日に届きました。ちょうどよいときに届きました。 ありがとうございました。」
まとまって弔問してくださった方々へ
「ご弔問と供花をありがとうございました。父は自分のためにこれだけのことを していただくのを気恥ずかしく思ったでしょうし、皆様がおそろいだったことを 喜んだと思います。」
何を言えばよいか分からないとき
「そこにいてくださって、ありがとうございました。今はこれだけしか書けません が、それで足りていると思います。」
最後のものは本当のことで、本当のものとして受け取られます。短い誠実さは、場に 合わせた定型より必ずよく通ります。
定型に聞こえるもの
- 「ご丁寧なご弔問を賜り、厚く御礼申し上げます。」 喪にある方が二十回受け 取る文で、まさにそのために誰の心にも何も残らない文です。挨拶状に必要なら、 具体的な一文を前か後ろに置いてください。
- 三人称で書く。 携帯から送るメッセージで「遺族一同」はちぐはぐです。 「私」か「私たち」と書いてください。
- 続いている喪を語る。 お礼は近況報告ではありません。受け取る方があなたの 状態を背負う必要はありません。
- 短さを謝る。 三行に理由づけは要りません。
どうしてもできないとき
多くのご家族がこの個別のお礼を一度も出さず、何年もあとに悔やみます。周囲では 誰も気づいていません。
書くのが止まるなら、人の名簿ではなくしてくださったことの一覧を作って ください。「Aさんが車を出した」「Bさんが子どもを見た」。行為が紙の上に乗ると、 文はほとんど自分で出てきます。 弔辞と同じ仕組みです。ほどくのは具体的な 事実で、一般的な気持ちでは決してありません。
そして芳名帳は手元にあるはずです。香典 返しのために必ず一度は開きますので、そのときに読んでください。名前も住所も そこにありますし、誰が来たのかを記憶から組み立てる必要はありません。



